2017 MAIN
NEW YORKER IN PARIS
10月はじめ、 ジャスミンは新作コレクションの取材でパリに行くことに。

ニューヨークとパリどちらも都会であることに間違い無いのだが、クラシックな美しさを残すパリの街並みはジャスミンのインスピレ ーションを大いに刺激してくれるのであった。

夕方の便でシャルルドゴールに到着したジャスミンは、タクシーに乗り込みホテルへと向かった。ヴァンドーム広場近くのホテルが常宿だった。朝、チュイルリー公園を散歩するのも便利だし、サントノーレのエルメスのウィンドウを眺めに行くのも楽しみの一つだった。35歳の時にずっと使おうとブラックのボックスカーフのケリーバックを買った思い出の店である。

もはや相棒と呼べるほど、使い倒しているケリーバック。
買ったのだから、ガシガシ使わなければと、特別な日でなくいつも持ち歩くほど少しヤレタ雰囲気も気に入っていた。ひそかに2個目にネイビーか、ブラウン、ボルドーあたりを狙っていた。

ホテルにチェックインし、年季の入ったリモワの荷ほどきをして、シャワーを浴びたら少し疲れがとれた。8時間くらいのフライトでも疲れるもんだな、なんて独りごちていた。お腹も減っていないし、明日に備えてワインでも飲んでぐっすり寝てしまおう。ルームサービスを呼んで、ワインを一口飲んだらもう眠くなってしまった。
次の日は、先に来ている後輩のブリジットと合流し各コレクションを回ることになっていた。

今日はピークドラペルのグレーフランネルのセットアップに、VANSのランピンを合わせてケリーバックをスタイリングしてみた。

1日に何件ものコレクション会場を回るのはとても骨のおれる仕事だが、コレクションを見終わったあとの充実感を味わってしまうと全ての苦労を忘れてしまう。しかし、なんでこうもショーは時間通り始まらないのだろう。まわりを見れば席には、顔見知りが並ぶ。バイヤーの席、ジャーナリストの席、同じ面々である。そんな中に、ロンドンのカイルを見つけた。コレクションをまわり、今季はどこもチェック柄を打ち出していて、チェック柄が気になり始めた。

久しぶりに再会したカイルはディナーに行こうと誘ってくれた。彼とは、留学していた頃に知り合ってお互いロンドンとニューヨークの地元の出版社へ就職した戦友のような仲だった。ショーからショーへと息つく暇もなく移動していた。タクシーに乗り外を眺めていると以前から気になっていたヴィンテージショップの前を通りかかり、どうしても気になってタクシーを降り店に飛び込んでみた。

そうしたら出会ってしまった。すごく状態の良いヴィンテージの赤いバーキンに。決して派手でない、この赤いバーキン、欲しい、絶対欲しい。こういうのは勢いが大事と、運命を信じ、買うことにした。

一度ホテルに戻り、少しリラックスした格好に着替えたかった。
最近気に入っている、スケーターパンツカシミヤのセーターを合わせて、 時計はセミヴィテージのロレックスのサブマリーナを。このパンツのシルエットは、懐かしいようですごく新鮮な気分だった。カシミヤのセーターの中には白いクルーネックのTシャツを合わせるのもお決まり。さっき買ったバーキンも使おう。スケーターパンツに、上質なバック。最高。 カイルはサンポール教会とセーヌ川の間にあるタイ料理を予約していてくれていた。

最近、トライベッカに引っ越したことや、インテリアに凝り始めてヴィンテージ家具屋を巡るのが楽しくて、たわいもなく、心弾む時間はあっという間に過ぎていった。レストランをあとにした二人は、カイルがもう一杯だけ飲もうとセーヌ川沿いを歩き出した。10月のパリの風は冷たく、カイルがコートを掛けてくれた。背の高いカイルのチェックのバルマカーンコートは仕立てが良くオーバーサイズで着ているのに軽かった。こんなコートをパリで見つけて買って帰ろう。

セーヌ川の水面にはオレンジの街灯が美しく揺れていた。