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2018 MAIN
ELEMENTS OF JEANS

ここのところ、些細なことでピーターとケンカすることが増えていた。

最近、エディターからシニアエディターに昇格したジャスミン。
今までよりチームを束ねることに少しプレッシャーを感じていたのか気持ちに余裕がなくなっていた。
ピーターはいつもと変わらず穏やかなのに。そんな自分にも腹が立ち、またイライラ。「こんな自分じゃなかったのに」。

そんな折に、編集長のマリアンヌがランチに行こうと誘ってれた。マリアンヌはジャスミンの憧れだった。
彼女は明るくて誰からも好かれるような存在。編集長としてのキャリアは長くないが、着実に結果を出し会社の重役からの評価も高かった。当然、チーフエディターとしてのスタイルも最高にクールだった。

その日は、チェックのカラーレスジャケットの中にカレッジロゴの古着のTシャツを着て、ブラックデニムにコンバースだった。デニムに会う上品なカジュアルを印象づけるHERMESのバレニアレザーのBIRKIN30もカッコよすぎた。
これぞHERMESというしなやかなブラウンレザーに生成りのステッチが最上の品を感じさせた。
数ヶ月前、赤いBIRKIN30をヴィンテージショップのPrelovedで見つけ、清水の舞台から飛び降りるつもりで購入したのもマリアンヌの影響だった。

ランチが運ばれるのを待つ間、「ジャスミン、元気ないじゃない」。とマリアンヌが切り出した。
ジャスミンは、マリアンヌには素直になれた。
最近、昇格したことでプレッシャーを感じていること、そのことで余裕がなくなりピーターに当たってしまうこと。
そのことを聞いたマリアンヌは「数年前の私と同じね!」、と笑顔で応えた。
どんな時もシリアスにならない彼女の姿勢も学ぶべきだとつくづく感心するジャスミン。
「がんばって働いていると、必ずどこかで見てくれていて評価してくれる人がいる。
そしてステージアップして任される仕事も増えて行く、そこで壁にぶち当たる。
でもそれって誰でも自然にぶつかることで、難なくクリアできる人なんて誰もいない。
みんな顔では笑っていても、中身は悩みだらけ。
あなたは、急いで結果を出すことを意識しているけど、ステージが上がったんだからペース配分を考えなきゃ。
少し考え方やアプローチを変えたらいいだけよ!、何年か前の私にも言ってあげたい。」とマリアンヌは微笑んだ。

注がれる白ワインを見つめながら、マリアンヌはこうも付け加えてくれた。
「この前、ピーターとカーライルのバーで偶然会ったの。
その時、彼はあなたの昇進を心から喜んでいて、ひたむきに仕事に向かう姿勢に刺激を受けていて、
そんなあなたがまぶしくて、ますます好きになった」、と言っていたわ。

ジャスミンは「なんだ!、わたしって最高にしあわせじゃん!」と心から思える自分がいた。
今日は少し早く帰って、ピーターと美味しいワインを空けようと思った。
こういうタイミングでこんなランチに誘ってくれるマリアンヌにも感謝していた。

「さぁ、こんなときは気分転換にショッピングでしょ!。早く食べて出かけるわよ」。
彼女は自分が最近買ったジェネラルジーンズを勧めてくれた。たしかに可愛い。
「今日は迷わず絶対買おう」と心に決めて、レストランを後にした。