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2019 SPRING&SUMMER
This season's story
ようやく空が明るくなってきたばかりの澄んだ空気の中ベンはランニングから自宅に戻ってきた。
ヘザーグレーの古着のフーディからは湯気が登るほど汗をかいていて、最高の気分だった。
戻ると真っ先に愛犬のトムが駆け寄って主人の帰りを喜んだ。トムはビーグルで3歳になろうとしていた。
キッチンの大きなシルバーの冷蔵庫を開けると、オレンジジュースをグラスに注いで飲み干した。トムのトレイにも水を注ぐ。
シャワーを浴びる前に、コーヒーマシーンに豆と水をセットしてマグカップを二つ用意した。

シャワーの音で目を覚ましたジェニファーが起きて来てマグにコーヒーを注ぐ。
春は近くてもまだ肌寒く、ベンのパタゴニアのブラックの大きなフリースを羽織り、朝食を作り始めた。
ベーグルをスライスしてトーストしてリコッタチーズとイチジクのジャムを乗せる。
シンプルなスクランブルエッグとケールサラダを添える。
そうしているうちにベンがいつものデニムにプレスの効いたサックスブルーのシャツにボルドーのニットタイを合わせて身支度を済ませてきた。
ニットタイは先日ジェニファーがプレゼントしたエルメスのものだった。大事な用事の時に締めるとあたためていて今日がその日だった。

ベンの母校から最近手がけた建築について、学生たちに講演を依頼されていた。
講演なんて柄じゃないけど、後輩たちにこの仕事の楽しさを伝えられたらと思い引き受けた。
母校はボストンにあるアイビーの名門だ。
ニューヨークからボストンまで車で5時間くらいかかるけど2人で初めてのロングドライブにはちょうど良かった。
休日を自然で過ごすことが好きなベンはディスカバリーに何年も乗っていた。
講演のあとは実家に立ち寄りジェニファーを自分の両親に紹介する予定だった。
ベンが朝食をとる間、ジェニファーは支度することに。

3ヶ月前、ジャスミンから紹介されてすぐにお互い惹かれ合いベンのレジデンスで一緒に暮らしはじめた。
ドライブをリラックスして楽しむために、ラフに穿けるのに上品な印象もあるシルクパンツに上質なコットンニットを合わせて。キャリーケースにはシルエットが気にいって最近購入したキャロットデニム裾がカットオフのチノなどボストン散策に欠かせないカジュアルなパンツを支度する。

ベンの両親に会う時には、この春夏に楽しむために購入したブラックドレスを着ようと考えていた。春夏にいろんなブラックアイテムを試してみよう!

二杯目のコーヒーを飲み終えたベンが、駐車場に止めてある車に荷物を運び始めた。後ろをトムが着いていく。指笛を吹いて後部座席のドアを開けるとトムが颯爽と飛び乗る。ジェニファーを迎えに戻ると、準備は万端。エンジンをかけると、トムが嬉しそうに窓の外を眺めていた。