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新緑の芝生が眩しいセントラルパークのドッグランをトムが楽しそうに走り、遊ぶ。
都会にこれほど大きな公園とドッグランを設けてしまうところもニューヨークという街の魅力の一つだったりする。
この春に独立し自分の設計事務所を立ち上げたベンは、最初に手がける仕事を選ぶまでの束の間の充電期間を作ることにして、ベンは毎日のようにトムとここへ来た。大切なことはいつも身近にあったりする。

以前の設計事務所のクライアントもベンの独立を応援して仕事のオファーを沢山くれたがその全てを断り、元の事務所の後輩へと引き継いだ。
ベンはどこからそんな男前なことを学び成長したのか?。それは元の事務所のオーナーであるジョナサンからだった。
ジョナサンはエスタブリッシュな家庭で育った「お坊ちゃん」のベンに、働くことの意義や男として守らなければならないものを自分の経験をもとに事あるごとに話してくれた。当のジョナサンも務めていた建築会社を独立して今の会社を立ち上げ、その際の去り方や後輩への配慮など全てをベンには話してくれていた。
クリアなビジョンを持つベンにとって、この学びを活かすことになんら抵抗がなかった。ベンはシンプルでタフな奴だなと、ジョナサンも独立を心から喜んだ。

そんなベンの誠実な人柄や仕事ぶりを聞いた新たなクライアントからのオファーが既に数件舞い込んできた。
設計に限らずどこの世界も狭いもので、才能がある誠実なものをほって置くわけがない。この有難いオファーもベン一人で対応するには限りがある。だからこそ、最初に誰の仕事を受けるかをしっかりと決めたかった。

ジェニファーはベンの確かな気持ちを理解してから、彼女自身も今まで以上に仕事に誠実に向き合っていた。この日は自宅で記事を書くことに集中していた。

ファッションエディターとして最近耳にする事と言えば「サスティナブル」というワード。
このサスティナブルというワードがトレンドになってしまっていて、本当の意味でのサスティナブルについて一体どれくらいの人が真剣に考えているか疑問だった。環境に配慮した素材を使うことだけがサスティナブルでは決して無いと思うからだ。環境に配慮した素材を使用した洋服を数回きて着なくなる、または捨ててしまう。こんな現実がサスティナブルというトレンドの影にあることについて記事をまとめている途中だった。

「例えばとても上質なヴァージンカシミアのニットを大切に10年着るのと、リサイクルウールのニットを毎年買って一年で消耗し捨ててしまう。どちらが環境に優しいのだろうか。
本当に必要なことは、長く着たくなるような愛着をもてる洋服をブランドが作り、それを選ぶ目を消費者が持つことから始めなくていかないと思う。一つのものを長く使うことには愛着が必要であり、愛着を持つには手入れをすることが必要だったりする。自分のワードローブを整理して、残したいものをブラッシングしたりアイロンをかけたりするだけでウンと愛着が湧いてくる。そうなったらしめたもので、しばらく買い物なんてしなくて全然平気になるから不思議。」

こんな記事を書いていたら、自分のワードローブの整理が無性にしたくなってしまった。
ファッションエディターとして、この仕事が天職として疑わないジェニファーもまた膨大な量の洋服を溜め込んでいた。

ワードローブの整理の極意は「自分が好きなものだけ」にすることに尽きる。そして2年も着ていなければ、もうそれは着ることはないと考えた方がいい。この二つの条件で整理を始めると驚くほどが処分の対象となる。
処分の方法は友人に譲るか、セカンドハンドの店に売りに行くか、潔く寄付してしまうか、自分の好きな方法をとればいい。
ドラスティックに整理を始めたらクローゼットの半分が空いてしまった。埋もれてしまっていて好きだったけど着ていなかったものを洗濯したりクリーニングに出したりし始めたら、何だか愛着が湧いてきて手持ちの服でしばらくやっていけそうな気がした。

自宅に戻ったベンが思わず「ワァオ!」と驚きを隠せないほどスッキリとしたクローゼット。
ここから揃えていくワードローブは、「本当に好きなものだけ、そして長く着たいと思えるものだけ」。なんて話していたらベンの携帯が鳴る。
電話の声はジョナサンだった。
「やぁベン!元気でやっているか?。実はなニューハンプトンに別荘を買うことにしたんだ、そこで大掛かりなリノベーションが必要になる。それをお前にお願いできないかな。」
ベンはこれ以上の独立後初めての仕事があるだろうかと、ジョナサンの優しさに震える声で答えた。「ありがとう、ジョナサン。じゃあ、いつニューハンプトンに向かう?」。

二人のこのプロジェクトはたちまち業界の噂となり、素晴らしい設計をしたベンはもちろん、弟子をあたたかく見守ったジョナサンにも多くの賞賛が集まった。